新たな一射へ

下り坂62 人生を折り返したと自覚したのはいつのことやら...

白いグローブの人

射撃場で話しかけてくれた印象的なシューター 初めて射撃場を見学したとき

初めて射撃場を見学したとき、

 

一人の射手が声をかけてくれた。

白いグローブをしていた。

順番を待っているあいだ、
射撃のことや銃のこと、いろいろな話をしてくれた。

このご時世、射撃をする仲間も減っていて、
おまけに制度も厳しくなるばかりで、続けるのもなかなか大変だということ。

一度、やめようかと思った時期もあったらしい。

そのとき娘さんに言われたという。

「お父さんは射撃をやめたらダメになっちゃうと思うよ」

それで続けているのだと、少し笑いながら話してくれた。

 

クレー射撃はメンタルスポーツだから、

男より女性の方が上達する人が多いんですよ、
とも言っていた。

 

「あの人を見てご覧」

白いグローブをしたその人は、射台の先を指して言った。

「動きに無駄がない。一番参考になると思う」

視線の先では、淡々と射撃を続けている人がいた。

でも、正直に言えば、そのときの自分にはよく分からなかった。

それよりも、話しかけてくれたその人の動きの方が、なぜか美しく見えた。

銃を開く動き。

構える姿勢。

どれも静かで、無理がなくて、自然だった。

 

まだ何も知らない見学者の目には、そちらの方が印象に残った。

自分はその人の射撃をずっと見ていた。

二十枚くらいまでは外していなかったと思う。
でも終盤で何枚か外した。

ラウンドが終わり、射台から戻ってきたとき、
その人は銃を折って肩に担いで、
少し項垂れているようにも見えた。

でもその姿が、とても自然だった。

そのあと、その人は自分の銃を見せてくれた。

ベレッタの SO5 だった。

彫刻も見事だったけれど、
今思い出すのは木の色だ。

長く使われた木の、落ち着いた色。
前のオーナーから受け継がれた歴史が宿っているのかもしれない。

 

あのときは、何気ない、ただの出来事だった。

でも今振り返ると、
あの時間は自分にとって大きなポイントだった気がしている。

初めて射撃場に行って、
最初に話しかけてくれた人。

そのときはただ話を聞いていただけだったけれど、
今になって思う。

あの人の言葉の一つ一つが、
自分の中に残っていたのだと思う。

もしかすると
「新たな一射へ」は
あの白いグローブの人の言葉と所作から
始まっていたのかもしれない。

もしまた射撃場で会えたら、
あのときのことを伝えてみたいと思っている。

 

一射ずついこう

まだ撃っていない一射をいちばん大切にしながら