まだこの頃は、
MTBでの遊び方なんて知らなかった。

ただひとつ、決まってやることがあった。
近場の上り坂を、息を切らして登る。
その先にある、静かな公園まで。
そして芝生の上に横になって、
ただ本を読む。
それが、
唯一の気晴らしだったのかもしれない。
ロードバイクとは何者か。
車を運転していると、よく見かけることはあった。
ただ、それだけだった。
今思えば、あんなパツパツのウェアにヘルメット姿で乗らないといけないのか、と。
どこか自分とは別の世界のものに見えていた。
それでも、気づけば店に足を運んでいた。
たいして調べもしないまま、
ロードバイク専門店で、その店のオリジナルの一台を選んだ。
オールカーボンの完成車。
その店で一番安いモデルだった。
今から、もう20年以上前のことだと思う。
このあたりから、
本格的に自転車との付き合いが始まった。
――気づけば、戻れなくなっていた。
一漕ぎずついこう